保険屋に未来はあるか?

保険業界ってどうなるんでしょうか?そんなことについて自分勝手な考えを淡々と呟くブログです。

売れる保険屋と売れない保険屋

保険会社も含めて保険屋さんと言われたりしてた、気がする。最近はどうだろう。保険が売れる売れないの差は商品に依存するのか、マーケティングに依存するのか?もちろん商品とマーケティングをキレイに切り分けて評価することなんて出来ないが、ざっくり言えばこれまでの保険業界は商品に依存してきたような気がしている。もちろん消費者ニーズを汲み取るという意味でのマーケティングは行っていたとは思うものの営業職員や保険代理店(販社)が売り子であったが故に他業界ほどにはマーケティングを本気でやって来たとは思えない。だからこそ、損保ジャパンのようにエンドユーザーではなく販社であるビッグモーターのような会社の意向把握・確認だけは得意になってしまったのかも知れない。もっとも本件は損保ジャパンに限らず他の6社も似た者同志で、最後に踏ん張った会社、ガバナンスが効いた会社と効かなかった会社の違いでしかないと言ってもそれ程大きな間違いではない、と心の奥底では思っている。

所詮、保険屋さんなんだよな。リスクコンサルティングとか、リスクマネジメントとかかっこいい言葉で着飾ってもどこかに怪しさを見透かされているのかも知れない。

いま保険業界を揺るがしている、いくつかの事件が本当にお客さまのことを考えないとやっていけなくなる前の、最後の時代の最後の出来事であって欲しいと思います。

保険は変わったか

正確に言えば「保険販売の現場は変わったか?」になるかも知れない。もちろん、変わった現場はあるだろう。しかし、変わっていない現場だってあるはずだ。金融庁や財務局がどこまで保険会社による代理店監査の実態を把握しているか知る由もないが、あれほど形式的なものはない、という声も聞こえて来ている。

2016年の保険業法改正の主眼は意向把握・確認と情報提供・比較推奨の適正化にあったのではなかろうか?保険募集人に新たに課せられた体制整備義務はこれらを担保するための仕組みに過ぎない。しかしながら、保険会社が多少なりとも突っ込んで監査するのは損保で言えば保険料の管理についてであって、実際の保険募集現場の実態把握を本気でやっているようには見受けられない。このことは複数の情報から推察できることではあるのだが、いったいどれだけの保険会社が「うちは代理店の保険募集・販売実態を正確に把握しています。」と言えるだろうか。保険募集人にも体制整備義務が課されてんだから保険会社は知らんてか?

単にロープレをやれば凡そ把握できる話だが、そのような監査をやるんだ、といった監査方針が降りて来たことはあったか?保険募集人が利益を得るためには効率化が必要である。そのためには募集プロセスの複数の箇所を端折ることが最も有効な施策であり間違いなく収益の向上に貢献する。その結果(当然ながら)適切な意向把握・確認や情報提供・比較推奨は後景へ追いやられる。保険業法改正後も続けられている保険代理店向け研修や顧客本位の業務運営の文脈で語られる「お客様の最善の利益の追求」との乖離に悩む保険募集人もいるにはいるだろうが、会社方針には逆らえない。会社だって貰えるものは貰っておきたい。保険会社からの様々な営業支援します的オファーを断る保険代理店なんて聞いたことないな。。。

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ビッグモーター“保険代理”11月末で取り消しへ 金融庁が通知

鈴木金融相「経営管理体制が構築されておらず、適正な保険募集を確保するための体制整備も行われていない」

これ、保険会社へ向けた発言じゃないか?最低でも3年に1回は代理店監査をやるじゃん。保険業法改正から7年も経つのに乗合会社の一つも体制整備の不備を指摘できなかった訳で。

大規模だから忖度したのか、監査能力がないのか、単にやる気がないのか。

だからね、金融庁さん。保険会社による代理店管理の高度化なんて無理。保険代理店の中には体制整備しているなんて建前でしかないところが多い。意向把握・比較推奨なんて看板を掲げただけ。そろそろ現実を見るべきじゃないか。

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金融庁は損保大手を「金融事業者リスト」に掲載するか?

タイトルが長いのはご容赦いただきたい。しかし、金融庁のスタンスが問われる話でもあり、結果がどうなるか興味がないと言えば嘘になる。

(日本経済新聞)

損保大手、契約者の損失回復急ぐ ビッグモーター不正〜(略)損保業界は2000年代、保険金の不払い問題で金融庁から一部業務停止命令が出される事態となった。損保大手関係者は「この問題でコンプライアンス(法令順守)意識がかなり高まった」と振り返る。その後は金融庁が重視する顧客本位の業務運営に注力してきたはずが、ここにきて改めて保険契約者に向き合う姿勢が問われている。(以下略)

まぁ、日経としてはこのように書くしかないのかも知れないが、カルテル問題含め損害保険業界の体質はそれほど変わっていない気がするのは私だけか。。。

そのような中、あと2週間もすれば金融庁が金融事業者リストを公表する。いま芳しくない話題を振りまいている損保各社はこのリストに掲載されるのか、それが私の興味の在処である。もっとも、金融庁はこのリストを「本原則を採択の上、取組方針を策定し、当該方針に基づき取り組んだ結果等を取組状況として公表している金融事業者のうち、当該リストへの掲載を希望し、かつ、金融庁が定める掲載要件を満たした金融事業者を取りまとめ」たものとし、かつ、掲載要件を以下の通りとしている。つまり、形式的要件を充していれば掲載しますよ、と言うことだ。

しかし、である。顧客本位の業務運営を謳う金融事業者リストにこの状況下で大手損保を掲載すれば、金融庁自身の見識が疑われるのではないか?いくら、形式は充しているとしてもね。

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『金融事業者リスト』の掲載要件
(ⅰ)金融庁所定の対応関係表を金融事業者のウェブサイトに掲載することにより、取組方針等について、本原則2~7(これらに付されている(注)を含む。以下、同じ。)との対応関係を原則毎に明確に示していること。また、不実施等の場合には、その理由や代替策を取組方針等に分かりやすい表現で記載するほか、その掲載箇所を対応関係表に示していること。
(ⅱ)金融庁所定の報告様式の記載事項について、形式的な不備(空欄・記載誤り等)や不明な点がないこと。

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カテーテル?カルテル?

損害保険業界における価格調整の件は秋には一定の方向性を見るだろう。それが初秋なのか晩秋なのかは分からない。 どう転んでも業界にとって悪い方向にしか作用しないわけで、 いまの気持ちは暗澹たるものだ。

最近の報道では保険代理店にその原因を求めるような声も大きくな っている様だが、それのみに原因を求めるには無理があるだろう。 そんなことで責任逃れしようとしているとは思わないが、 今回指摘されてるような事象に保険会社、 保険代理店双方とも鈍感だったことは間違いない。さらに言えば、 保険仲立人はどうだったのか? そこにまでメスを入れなければならないだろう。

ちなみに保険会社(保険代理店向け含む)のコンプライアンス・ マニュアルに「禁止行為」 として独占禁止法関連の記載はあったのだろうか? 仮になかったとすれば、この業界が「慣習化」 するほどのリスクを抱えていたにも関わらず、 同法にさして注意を払っていなかった証左になる。 記載があったとしても金融庁はこういった面(リスク管理、遵法意識) について適切な調査を行うべきであるし、それは保険代理店に対しても同様であって各保険代理店の独占禁止 法に対する意識の在り方も検証すべきである。

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酷い話

ビッグモーターの件は、広く世間に知られることとなり、中でも損害保険ジャパンは昨年夏に他の2社のスタンスに反して入庫を再開したこと、出向者の数が飛び抜けていることから特に批判を浴びる対象となっている。

みなさんは2006年の損害保険ジャパンに始まった損保大手社の業務停止を覚えているだろうか?あの時、経営トップに居座り続けようとして小手先の企業再建を打ち出した当時の社長が、金融庁の圧力もあってか結局は数日の間をおいて退陣せざるを得なくなった。そんな経験を通して企業文化を変えようとした筈だったのではないか?

日頃、保険代理店などの販売委託者に対し、コンプライアンスの徹底、お客様本位の業務運営といったことを日常業務のみならず点検や監査の際に「大事なことです」と言っているのは誰だったのか?

損害保険ジャパンに限らずだが、特に同社は(報道によれば不正行為を知っていたにも関わらず)隠蔽しようとした疑いを持たれており、他社以上に批判が集まりやすくなっており、政府与党や金融庁幹部から名指しされる事態となっている。

さて、なぜそうなってしまったのか?

出向者の存在は過去からのものであり、この事象が報道されるようになってからでは既に消し去り様がなかったが、入庫停止は継続できたはず。信じられないことに損害保険ジャパンは何を焦ったのか「入庫再開」という悪手を採った。とどのつまり、同社には「コンプライアンス」というものなんて根付いていなかったということだ。「隠し通せる」と思ったのか?ここにはリアリストであるべき(大企業としての)経営者の判断はない。想像でしかないが、あのとき、損害保険ジャパンの社内では未熟としか言いようのない庇い合いの構図が展開されていたのではないだろうか?

いずれにしても損害保険料率算出機構が参考純率を計算しなければならない事態に陥った。損害保険ジャパンの社長も金融庁が繰り出すいくつかの処分の過程のどこかのタイミングで、いずれ退陣せざるを得ないだろう。歳若く社長になり同時に損害保険協会長となった時の華々しさとは逆に、悪名を背負ってこの業界から去っていくことになるのだろうか。

しかし、いつになったらこの保険業界に「コンプライアンス」は根付くのだろうか?