マッチングサービス
「マッチングサービス」と言えばお付き合いの話かと思っていた。まぁ、そうでもないらしいと言うのが今日の話で、調べたわけではないので損保でもあるのかも知れないが、生命保険の分野で既に始まっている「代理店の募集人や取扱者を掲載し、AI を活用したデータ分析でマッチ度を算出し、お客様ごとに最適な相談相手をご紹介するサービス」がそれだ。
マッチ度を算出するからには募集人や取扱者をスコア化しているのだろう。何をもって?顧客満足度(NPS?)は使いそうだが、それだけか?
一般的に保険会社は保険代理店の評価は行うが募集人まで評価している事例はあるのだろうか?もちろん、営業職員の評価は別の話だ。つまり何が言いたいのかと言えば「マッチングサービスのアルゴリズムは公開すべきだ」ということ。
AIに有りがちな「ブラックボックス」化は顧客への重要な情報提供項目のひとつとして避けるべきでもあるし、選択される側の募集人に対しても、そのアルゴリズムを開示することは当然のことではないだろうか。
公的保険を補完するもの
いつの間にか先頭に押し出されたみたいな。そんな感じがしないでもない。何処かで深い議論があったようには思えないが、一昨年末に「公的保険制度に係る情報提供をすべきである」(正確な引用ではないですが)、概ねこんな感じの監督指針に改正された。
損害保険が関係ないわけではないけれど、どちらかと言うと生命保険募集に大きく関係するのではないか、と感じた。なるほど、民間保険は公的な保険制度を補完するものであったのね、と今更ながら知った方もいるのではないか。でも、だとするならば何十年にもわたって、この点を強調してこなかった保険行政ってなんだろうとも思う。
もう一度繰り返すが、損害保険が関係ないわけではないけれど、損害保険からするとやっぱり生命保険的(定額)保障というのは多くの場合、いざ支払いを受ける段階になると「得し過ぎ」なんじゃね?と感じるものだったわけで。これって本当に必要な保障を充足したのかというとそうでもない場合もあって、なんか保険金たくさん貰えたからラッキー的文脈もアリなんだけど、その原資は保険契約者が負担していたに過ぎない。つまり、多少乱暴な言い方にはなるが「保険金たくさん貰えたからラッキー」感が強ければ強いほど保険金とは関係ない圧倒的多数の方々は無駄な保険料を払ってたんじゃないの、と思ってたわけ。
死亡保障はともかく入院保障とかは限度額ありの実損払にした方が「公的な保険制度を補完するもの」にしっくりくるんだけど、と思うのは私だけ?
生命保険って難しい?
最近になって生命保険を売り始めた古い友人がぼやいてた。
友人「生命保険商品って保険会社ごとに違うじゃん。損保も違うけど生保の違いってさ、それを知らないと保険会社規定違反になって処分を受けるような場合もあるんだよ。知ってた?」
私「知らないよ。商品の内容が違うとかそういう間違った説明をしちゃうとダメって話?」
友人「違うんだよ。生保って一次選択とかあって基本は面接募集が主流なんだよ。もちろん郵便のやり取りで終わる募集もあるけど絶対に契約者や被保険者と面接しないとダメな商品がある。これがさ、会社によって基準が違うから厄介なわけよ。商品ごとの面接・無面接の決まりをきっちり把握しとかなきゃいけないわけ。」
私「なるほどねえ。いまどきネット完結の保険商品もあるのに時代遅れな気もするけど」
友人「でもさ、処分されたら堪らんわけよ。規定を知りませんでしたって言っても処分はされるからさあ。一社専属ならまだしも、うちみたいな乗合代理店だと正直覚えきれないよ。」
私「でも、おたく比較推奨やってるから特定の保険商品を売るってわけにもいかんだろ。」
友人「会社の方針で3社に絞り込んでいるから乗合全部覚える必要はないけど、それでも商品のウリはもちろん、規定や事務処理を覚えるわけだから3社でも結構きついよ。だからさ、意向把握しながらできるだけ得意な保険会社の商品に誘導するわけ。みんなそんなもんよ。」
私「それって正しい意向把握になっているんか?」
友人「知らん。お客様対応シートは正しい意向把握をしたことになっているからな、大丈夫だろ。」
私「・・・」
限界?
機関代理店とも言われる企業代理店の主力は損害保険である。その歴史は長いが一部の企業代理店を除き、態度だけは偉そうながら(親会社からの転籍組も多かったから)、業務的には保険会社の出先機関のような、言い換えれば保険会社に丸投げに近いことをやりつつ収入を得ていた企業代理店も多かったはずだ。統計をとった訳ではないが、業界内で流れてくる話を総合すればレベルの差こそあれ概ねそんな感じである。
一方、少ないながらも保険会社と対等、もしくはそれ以上のレベルを持って自立(自律)して(特に企業保険分野)親会社及びそのグループ企業のための保険手配を企画し、グループ内リスクマネジメントの一端を担ってきた企業代理店もある。
このような企業代理店にとっての当面、かつ中長期にわたる課題は事業の継続性をどう担保するか、なのではないか。一般的に企業代理店の業績は親会社のグループ政策に依存する。しかもそれはほぼ国内の話だ。自らが所属する企業グループが成長を遂げれば企業代理店も大きくなり得るし、逆もまた然りである。厄介なのはグループが筋肉質化する場合で、グループ全体の事業は成長するものの、そこに設備投資や人員増加が伴わなければ企業代理店自体の成長には繋がりづらい。その一方、固定化した人員が過剰となり利益率の急激な悪化をもたらす可能性も捨て切れない。そもそも企業代理店の人員構成自体、社会を反映した逆ピラミッドになっているかも知れず、だとすれば高齢化した職員がデジタルネイティブ同様に振る舞えるわけもない。経験も通じずスキルさえ陳腐化するのだ。これは経営者にとって負債でしかない。
このような場合において企業代理店経営者はどのような戦略を採りうるのだろうか。ちなみにリテール分野の収益性は今後も低下が続くだろう。改正業法や顧客本位を真面目にやればコンプライアンスリスク管理コストがアップする。そして、そのほとんどがリテール分野に起因するものだ。いまのところ企業グループの企業保険分野と個人保険分野双方を手掛けている企業代理店が多いが、いつまでこれを両輪とし続けられるのか?その限界は意外に遠くないような気がしている。
神は細部に?
生命保険協会の代理店業務品質評価運営は細かい。損保側から見ると代理店自己点検を上回るあの細かさはちょっとやり過ぎ感がないわけでもない。あそこまでやるのであれば、大手生保の営業職員管理をもっと徹底した方が良いんじゃないかという気がしないでもない。
とは言いながら、あの評価項目を自己点検で使えば損保代理店の体制整備に役立つことも間違いない。一定規模の保険代理店の多くは生損保兼営だろうから生保サイドであの「制度(?)」採用を代理店に推奨してくれるのであれば、それはそれで損保の代理店管理高度化にも資することになるだろう。
だから、かどうかは分からないが、損保側で類似の「制度」が検討されている様子はない。金融庁も「真似しろ」と言っている形跡はなさそうだ。何故か金融庁は生保代理店と損保代理店を別モノと考えていると聞いた。確かに損保の代理店の多様性は生保よりあるわけだが、それが扱いを変えるほど決定的な理由になるとも思えない。金融庁は最近、あの「制度」の適用対象を事業報告書提出代理店に限らなくて良いじゃないか、と言い始めた。これが何を意味するのか、もうちょい様子を見てみたい。