保険屋に未来はあるか?

保険業界ってどうなるんでしょうか?そんなことについて自分勝手な考えを淡々と呟くブログです。

代理店業務品質評価?

前回の更新からなんやかやと忙しく、気がついたら2ヶ月以上経ってしまった。もっとも、このように期間が空いたことで改めて解ったこともあって、まぁ、結果オーライではないか、と言い訳を言える状況にはなった。

さて、本年5月から代理店業務品質評価の運営が始まったわけだが、生保協会が設定した上限である100社には全然届かなかったものの、54社の申込みがあったという。拙速に進めた割には申込みはあった方ではないか、と私は思っている。

一方で(これが言い訳なのだが)生命保険業界の遵法意識の欠如を示す、いろいろな事件も明らかになった。「代理店業務品質評価」をします、と大上段に振りかぶったものの、保険会社自体のガバナンスだってボロボロじゃないか、ということが世間的に公になってしまった、というのが現下の状況ではないか。営業職員による無法、業務改善命令を受けてしまうような経営陣自らのコンプライアンス意識の欠如。それでいて、どの保険会社も素晴らしい「顧客本位の業務運営」を謳っている茶番。「顧客本位の業務運営」の前提はコンプライアンスだよね、と金融庁が言う様は幼稚園児を諭しているようでさえある。

同じ保険業界でもこちらから見た生命保険業界は異質である。わたし自身は子会社方式による生損兼営が認められた頃になってやっと生命保険に触れるようになったのだが、保障より利得?を強調する販売方針に度々違和感を抱いたことを覚えている。文化が違うだけでは済まない「危うさ」のようなもの。そんな感じが拭えなかった。もちろん、こちらの業界が完全だとか、言うつもりはない。一部の優秀な社員を除けば、その質の劣化は確実に進んでいる。しかしながら、あちらと同等に論じられたら堪らないのも事実だ。

金融庁の度々の警告にも関わらず、販売量を強烈に追い求める、あの強欲さはどこから来るのか?

最近では生命保険業界に対する「営業職員向けのガイドライン」を策定するよう促す動きがあるが、営業職員は生命保険会社と雇用関係にあり直接の監督・指揮命令下にある社員ではないのか?さらに、コンプライアンスを一顧だにしない生命保険会社や経営陣が未だにあるとすれば、ガイドラインを設けられるべきは生命保険会社そのものではないのか。

既に代理店業務品質評価の運営は始まったものの、今すぐ着手すべきは

①生命保険会社のコンプライアンス及びガバナンスの徹底

②営業職員のコンプライアンスの徹底

だろう。

押し並べて保険業界は綺麗事で済ましたがるが、問題は相変わらず山積している。

代理店業務品質評価?

保険業界に関係のない者から見て生命保険業界と損害保険業界で様々な取り組みが別個にされていることをどう思うだろうか?

それぞれの業界で様々なガイドラインを策定しているが、それらについても目的は同じだとは思うものの書き振りは違う。そうならざるを得ない所の原因は、同じ「保険」でありながら商品性や販売方法の違いにあるのだろうと思う。そして、もっとも大きな差は(個人的見解)両業界の文化の違いだ。

生命保険業界ではここ数年にわたり(10年以上?)、金融庁から定期的に釘を刺される振舞いを重ねて来た。だからこそ、2016年改正保険業法が求められ、いま生命保険業界全体の取組みとして「代理店業務品質評価」なるものが必要とされるわけである。面白いのは少なくとも損害保険業界では同じようなことについての制度的議論がまったくされていない(内部的には多少の議論はされたかも知れないが公式には議論の存在は認めていない)、ということだ。

ご存じのとおり、保険代理店の多くは比重の差はあるものの生命保険と損害保険の双方を販売しているのが通例である。にも関わらず、運営は生命保険協会が主体であるが故に評価の対象は生命保険代理店業務だけとなっている。しかも金融庁の後押しがあってのものなのに。

損害保険業界から見れば「まぁ、やってみてよ」と様子見を決め込んでいる状況で、そもそも生命保険協会だけでは評価資源が足りないことが自明なのだから、お手並み拝見といった所が正直な感想だろう。

とは、云うものの個人的には「代理店業務品質評価」運営のインパクトはそれなりにあるのではないか、とも感じている。その辺りをちょっとずつ掘り下げていきたい。

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企業保険分野でネット完結型は使える?

ネット完結型と言えば個人保険分野であって、企業保険分野では難しいのでは、という気がしていた。それは今でも変わらないものの、単純に保険契約するだけなら、それも相当程度こなれたシステム(&UI)からなら「有りかな」と思うようにもなって来た。あくまで保険加入プロセスならばという限定付きであるが。

あいおいニッセイ同和さんがFinatextさんと組んで企業保険分野のプラットフォームを提供するという。現時点では、使い勝手や保険カバーの内容は解らない。ただ、使い勝手なんてものはWeb上での改善ループさえしっかり回せば良い、というのがこのご時世。それと法人が保険をネット購入することに何らかのハードルがあるのかないのか?その辺が肝なのか。

でも、事故のときどうするのかな、とは思う。常に保険契約当事者間で支払保険金額について合意できるとは限らない。普通は何かしらの交渉が行われるものである。そんな時、プラットフォーマーは間に立って対応してくれるのだろうか?うーん

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戦争

ロシアがウクライナへの侵略を開始して4週間になろうとしている。思うに任せない戦況がプーチンによるロシア軍の何でもありの攻撃をエスカレーションさせている。結局のところ、力を信じる者に譲歩を重ねれば行き着くところは容赦ない破壊でしかないと、1939年の出来事から世界は学んでいなかったわけだし、これからも学ばないことが国際政治の真の姿なのだと思う。

今回のことに多少なりとも意味を見出そうとすれば、戦後日本がなんとなく意味がありそうだと思っていた憲法9条はもとより、国連すら全く機能を発揮しないばかりか無駄であることを日本国民の多くが薄々悟ったことにあるのではないかと感じている。

西郷南洲翁遺訓に次の言葉がある。

正道を踏み、國を以て斃るるの精神なくば、外國交際は全かるべからず。彼の強大に畏縮し、円滑を主として、曲げて彼の意に順従する時は、軽侮を招き、交親却って破れ、終に彼の制を受くるに至らん。

こちらは大村益次郎

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DXというおまじない

この2〜3年? DXがバズワード化している。猫も杓子も「DX」だ。DXをどう定義するかにもよるが、いろいろな代理店さんの話を聞いている中では、それは単なるIT化だったりデジタル化だったりする。それでもやらないよりはマシだが、保険会社が本腰を入れ、社内の人材育成や社外からの高度なスキルを持った人材の採用、戦略的組織の新設などを積極的に行なっていることと比べれば、その稚拙さ(ごめんなさい)は一目瞭然だ。その多くが紙媒体からデジタルへの移行、そんなレベルなのではないか。確かにまずはそこから、ではあるもののそこがゴールでないことを理解しているのだろうか。

試しに社内でDXを担う組織の社員にAIや機械学習、InsurTechやEmbedded Insurance の動向、保険業界に限らない先進的事例の数々、マーケティングツールやボットなどの業務サポートツールの現在などを説明して貰ったら良いだろう。一人でもいいから、滔々と話を繰り広げられる社員がいればめっけもんだ。

ときどき、保険代理店の方とお話しする機会はあるが勉強不足の感は否めない。デジタル化の取り組みはサイロ化しており、横串が通っていないし、そもそも、経営者が下に丸投げなので大きな絵、グランドデザインがないのだ。こうありたい、こうなければ生き残れない、そういった危機感が経営者にあるのか?DXを遂行した後の「我が社の姿(DXが成功していれば今の姿と違ったものになる筈)」ってものを保険代理店さんの社員の皆さんが経営者に質問してみることをぜひお勧めしたい。

何してるんだろ

企業グループ内代理店のマーケットに対する考え方は保守的だ。自社が属する企業グループが伸長すればマーケットは増え、縮小すれば減る。自らマーケットを拡大する、といった考え方には(多くの企業代理店は)立たない。一つには、それでも代理店経営がなんとか成り立って来たからであろうし、一義的に奉仕すべきはグループの中核である親会社であって人的、またはサービス資源は、そこに投下すべきだからではないだろうか。

しかし、こういった考え方を今後も続けられるだろうか。企業代理店の顧客構造によるが、現役社員が多数を占め退職者が少数である場合、現役社員の加入率を上げることができる。これはまだ、先が見通せるパターンだ。では、退職者が多数を占める場合はどうだろう。一般的に退職者からの新契約はいずれ先細りになる。しかも高齢者からは新たな契約というより、保険料単価が安い特約の付加が多いのではないだろうか。つまり、このパターンは、それほど先が見えるものではない。多くの企業代理店にとって飯の種だった自動車保険もそれほど魅力のある商品では無くなってきている。メンテナンスコストがかかり過ぎるのだ。しかも、これからは保険料の低額化や代理店の役割減少に伴う手数料率低下も想定される。単種目の収益計算上容易に赤字になる筈だ。

しかし、企業代理店の経営者にとってこのような状況はそれほど危機的なものではない。非常に嫌味な言い方ではあるが、今現在の経営者が自社のX-Dayを見ることはないからだ。何故なら、

X-Dayは緩慢にやって来る。

からだ。

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成長戦略

経営戦略の本を開くまでもなく、企業に入れば年に1回くらいは「当社の成長戦略はー」と言った話が耳に入って来る。一般的に、と言ってもこれは私の理解だが、成長戦略とは売上高の拡大を目指し、さらに利益を積み上げることを目的とするものであって、まず売上高の拡大=市場における自社シェア拡大が最も優先すべき目標となるのではなかろうか。

当然ながら(人口減少や少子高齢化といった市場全体の規模減少は想定されているものの)保険業界もその多くは上記に沿って事業活動を行なっているわけだが、わたしの知る限り企業グループ内代理店だけは、ちょっと趣を異にするのではないかと感じている。彼らの多くはグループ企業=市場であって、一部、グループ外に打って出るケースはあるものの当該代理店内で主流にはなっていない。つまり、企業グループ内代理店にとって市場(自社マーケット)の趨勢は不可避的に親会社のグループ戦略に依存せざるを得ず、それが故に彼らの成長戦略とは(特に個人保険分野において誤解を恐れず言えば)グループ内における加入率アップといった、ほぼ唯一の戦術に頼らざるを得ない。

一方、経済のグローバル化や事業構造改革が進んだことにより多くの企業グループが強靭性を獲得したと同時にその体質は強化され(引き締められ)、個々の企業グループの規模は縮小こそすれ拡大しているケースは少数派ではないかと思われる。

したがって、企業グループ内代理店にとっての成長戦略はより一層「加入率アップ」といった一本足打法に依存しているのではないか、とわたしは推測している。もちろん、成長戦略は個々の保険代理店が考えれば良いことであるわけで、それが一本足打法であっても良いのだが、問題は「いつまでそれで耐えられるか」といったことを経営者が正確に理解しているか否かにある。

「あなたの会社や事業が、このままの状態だとした場合、その「 X-Day(終焉)」はいつ頃来ますか?」(戦略質問 金巻龍一著)

聞いた話でしかないが、企業グループ内代理店の多くはデジタル投資に踏み切れないでいる。せいぜい手作業をデジタル化しているレベルであって、経費予算上の制約を親会社から課されていることもこの傾向に拍車を掛けているようだ。だとすれば、デジタル投資に積極的なショップやWeb系乗合代理店からの攻勢の前に自らの牙城を知らぬ間に侵食され、気づいたときには「X-Day」を迎えていた、なんてことがそこかしこの企業グループ内代理店で起こるのではないだろうか。

ちなみに、企業グループ内代理店のコストはほぼ人件費であると聞いた。しかも正社員が多いため雇用関係を柔軟に変更できる環境にないようだ。さらに、保険代理店における利益率は企業保険分野で高く個人保険分野では低いのが一般的であることを考えれば、いつ個人保険分野の利益率がマイナスになるのか、今すぐにでも楽観的要素を排除した客観的なシミュレーション(ストレステスト)を行うことが「企業グループ内代理店経営者」の義務ではないだろうか?

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