保険屋に未来はあるか?

保険業界ってどうなるんでしょうか?そんなことについて自分勝手な考えを淡々と呟くブログです。

成長戦略

経営戦略の本を開くまでもなく、企業に入れば年に1回くらいは「当社の成長戦略はー」と言った話が耳に入って来る。一般的に、と言ってもこれは私の理解だが、成長戦略とは売上高の拡大を目指し、さらに利益を積み上げることを目的とするものであって、まず売上高の拡大=市場における自社シェア拡大が最も優先すべき目標となるのではなかろうか。

当然ながら(人口減少や少子高齢化といった市場全体の規模減少は想定されているものの)保険業界もその多くは上記に沿って事業活動を行なっているわけだが、わたしの知る限り企業グループ内代理店だけは、ちょっと趣を異にするのではないかと感じている。彼らの多くはグループ企業=市場であって、一部、グループ外に打って出るケースはあるものの当該代理店内で主流にはなっていない。つまり、企業グループ内代理店にとって市場(自社マーケット)の趨勢は不可避的に親会社のグループ戦略に依存せざるを得ず、それが故に彼らの成長戦略とは(特に個人保険分野において誤解を恐れず言えば)グループ内における加入率アップといった、ほぼ唯一の戦術に頼らざるを得ない。

一方、経済のグローバル化や事業構造改革が進んだことにより多くの企業グループが強靭性を獲得したと同時にその体質は強化され(引き締められ)、個々の企業グループの規模は縮小こそすれ拡大しているケースは少数派ではないかと思われる。

したがって、企業グループ内代理店にとっての成長戦略はより一層「加入率アップ」といった一本足打法に依存しているのではないか、とわたしは推測している。もちろん、成長戦略は個々の保険代理店が考えれば良いことであるわけで、それが一本足打法であっても良いのだが、問題は「いつまでそれで耐えられるか」といったことを経営者が正確に理解しているか否かにある。

「あなたの会社や事業が、このままの状態だとした場合、その「 X-Day(終焉)」はいつ頃来ますか?」(戦略質問 金巻龍一著)

聞いた話でしかないが、企業グループ内代理店の多くはデジタル投資に踏み切れないでいる。せいぜい手作業をデジタル化しているレベルであって、経費予算上の制約を親会社から課されていることもこの傾向に拍車を掛けているようだ。だとすれば、デジタル投資に積極的なショップやWeb系乗合代理店からの攻勢の前に自らの牙城を知らぬ間に侵食され、気づいたときには「X-Day」を迎えていた、なんてことがそこかしこの企業グループ内代理店で起こるのではないだろうか。

ちなみに、企業グループ内代理店のコストはほぼ人件費であると聞いた。しかも正社員が多いため雇用関係を柔軟に変更できる環境にないようだ。さらに、保険代理店における利益率は企業保険分野で高く個人保険分野では低いのが一般的であることを考えれば、いつ個人保険分野の利益率がマイナスになるのか、今すぐにでも楽観的要素を排除した客観的なシミュレーション(ストレステスト)を行うことが「企業グループ内代理店経営者」の義務ではないだろうか?

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